イタリアへ最初に降り立ってから今年で10年目。
いろんな思いを私なりに抱いて10年この国と通って来た。
いつも、新しい感動と衝撃を私に与えてくれる国だった。
私は今、フィレンツェに立っている。
気温は暑いが湿度が低いので、影に入ると涼しい。
この季節、ビールが美味しいのは日本と同じだ。
文学の世界では、なんども読み返す度に、
新しい感動が得られる書物を名作だという。
イタリアはまさに国の名作だ。
10年目のこの度もまた、私に新しい世界と感動を見せてくれた。
今回の旅で、初めて実感したのはイタリアの危険性である。
イタリアは極めて魅力的な国だからゆえに、
その麻薬性には大きな危険が潜む。
数ヶ月滞在したらもう、だれでもこの国の虜になる。
日本社会だけでは絶対に満足できない体になってしまうのだ。
この街に滞在すればするほど、
不思議に思うことがある。
それは、ストレスを感じないことだ。
まったくストレスが無い。
悩んだりする機会がない。
イタリアという国は、国が持つDNAの中に
ストレスという分子がないのだ。
これは、一見良いことがだが、
私は、その中に危険性を見た。
このストレスがない生活を一度してしまうと、
何もできなくなる。
ただ、一日一日を何の疑問を持たずに、
過ぎ行くだけの生活。
朝になると鳥のさえずりが聞こえ、
そして大聖堂の鐘の音が聞こえ、時計を見る必要も無い。
日本ほど美味しい料理は少ないが、
なんの文句もない美味しい料理が食べれる。
笑顔と挨拶に溢れ、不機嫌そうな人は少ない。
不機嫌そうな人を見ても、あまり気にならない。
美しい町並みと美しい服、美しい女性達に
映画俳優のような男達。
行きたいところへは、自由に行けるし、
一日中同じ景色を見ていても飽きない。
1日中なんにもしなくても充実した一日が終わる。
日本でなら堕落した生活をしていると思い、
なにかしらの引け目を感じるだろうが、
この国では、そんな思いにならない。
なぜなら、みんなそうしているから。
昼休みは長い。
電車は遅れる。
待ち合わせに遅れても、みんな遅れる国だから平気。
夜も12時からでもがんがん飲める。
イタリアには2種類のお酒しかない。
「楽しいお酒か、寂しいお酒」
ただし、寂しいお酒のときも町並みや景色が自分を支えてくれる。
寂しいときは、寂しいように、寂しさにしっかりと浸らせてくれる。
そして、その日の寂しさはちゃんとアルノ川が責任をもって流してくれる。
こんな、麻薬的な国へ来て、
身を滅ぼす日本人は多い。
特に女性は危険だ。
この国の麻薬に犯されて幸せになった日本人女性を
この10年でほとんど見ない。
みんなおかしくなっている。
しかし、そんな中でもおかしくならない、
身を滅ぼさない人もいるのはいる。
ただし、1000人に一人だ。
その1000人に一人は、実は天使だ。
会えば分かる。一般人には真似できない。
はっきり言って、人間界の人ではないのだ。
だから、普通の人が若くしてイタリアに滞在することは
私は薦めない。
ヨーロッパに滞在したいなら、
ロンドンかパリにしておいてほしい。
イタリアは、特にボローニャから南は、
必ず身を滅ぼすことになる。