由井ヶ浜、遠くの島は江の島。
生地屋と、秋冬の仕入れについて打ち合わせ中 (娘が撮りました)そんなことを叫んでいたら家内に、
由井ヶ浜、遠くの島は江の島。
生地屋と、秋冬の仕入れについて打ち合わせ中 (娘が撮りました)




何のために生き、何の為に仕事をするのか。
この、言葉にすると単純な問いに
自分なりの答えを出せた人が、
人として輝きと力強さを持つ気がしている。
私はそんな「輝きを放つ人」に憧れてきた。
そして今もその思いは変わらない。
私をイタリアへ飛ばし、
そして先月イギリスへの挑戦を始めたのも
そもそもはそんな思いが源泉となっている。
「輝きたい」そのためにもっと多くの視野を手に入れたい。
私にとって、旅を続けるのに十分な動機だ。
ファッションの世界は難しい。
いくら物語が素敵でも、
その「品」自体が魅力的でなければ売れない。
売れたところで意味がない。
さらに、いくら「品」としての魅力があっても、
その「品」に物語が無ければ、
きっと愛着にはつながらない。
本物とは何か。
その問いは、向き合えば向き合うほど深く、
そして感触を味わうのは難しい。
感触があったかな?と感じてもすぐに、
するっと手のひらからこぼれ落ちる。
昨今、作り手と買い手の距離が離れすぎていると感じるし、
その問題点をイタリアでも良く聞くようになった。
熱心な作者はイタリアも日本も多い。
物を作るジャンルの人々は、真面目な人が多い。
しかし真面目だけでは人を感動させられない。
地位や権力をいくら振り回しても、
なかなか本物にはならない。
本物であることをまず目指すより、
私は、まず「感動」を届けられるようになりたいと思う。
人を「感動」させることを見つけるには、
まずは自分が感動しなくてはいけない。
「感動」
困難だけれども、求めるべき尊いものだと思う。
娘が学校から持ち帰った風邪のウイルスを
ロンドンのど真ん中、イギリス大学の学生寮。学生がバカンスに出かけた空き部屋を激安で借りての4日間その2日目。窓の外から手入れの行き届いた美しい公園の木々が風で擦れ合う音、澄んだ風が心地よく顔に注がれることで私は目を覚ました。人生にとって必要なすべてが整っている完璧な状態で一日が始まる。そんなロンドンの2日目が始まった。
ヘンリープールという仕立て屋をたずねた。昭和天皇や白州次郎、吉田茂がスーツを注文してきた泣く子も黙る世界トップクラスの仕立て屋だ。ナポレオンに現在のスーツスタイルを提案し、市民服として認めさせたことで世界中に現在のスーツスタイルが浸透したといわれるまさに現在のメンズファッションの起源。それがヘンリープールだ。仕立て屋という仕事をしている私が、この店を訪れるのは、世界中の牧師がバチカンを訪れることと似ているかもしれない。
いつものように強運な私は、ヘンリープールのオーナーと直接話す幸運に恵まれた。
私は彼に早速質問した「仕立て屋にとって一番重要なことは?」と。
ヘンリープールのオーナーであるサイモン・カンディー氏は、そんな私の質問に即答して見せたその答えは私の想像よりはるかにシンプルで、私を納得させるものだった。
「サービス&プロダクトクオリティー」
たったこれだけのフレーズに、ヘンリープールというイギリストップクラス、いや世界のVIPが一度はスーツを作らせたい店の哲学が詰まっている。
荘厳なロンドンの町並みに知る人ぞ知る歴史的な名店がこじんまりとした佇まいで、今尚確かな鼓動を打ち続けている。
3週間に渡る、ヨーロッパ出張は、こんなドラマチックな幕開けからスタートした。